思いもしなかったインドへの旅
恩人との出会い
生きていると、誰しもがときおり大変な時期に出会う。
2003年は私にとってまさに試練というべき年だった。
家を失い、仕事を失い、父親を失った。
あまりのことに生きる気力を失い、ベットから立ち上がることができずに
廃人への道を突き進んでいた。そんなときに携帯のベルが鳴った。友人という
わけではない、まだ知り合って間もない私より若い男性からの便りだった。
それから彼は、毎日のように私を誘い出してくれた。私といえば、気力を失い、
ただ黙りこくって落ち込んでいるばかりだったが、彼はそれを見抜いたように
いろいろな場所に連れて行ってくれて、さまざまな話を聞かせてくれた。
そんな日々が続くある日、彼の知り合いのなかにインドへ行って治らないと
いわれた癌が完治した、という何処かで聞いたことのある話をする女性に出会った。
彼女は、私にインドへの旅を強く薦めてくれて、わたしも私で死に物狂いだったので
はんば無条件でインドへ行くことを決意した。
まったくインドになど興味はなかった。
行きたい国といえばアメリカやヨーロッパだったし、オーストラリアやニュージーランドという具合だった。
それがどう間違ってインドなどという、よく訳のわからない国に行かなければならないのかと、心のどこかで抗議している自分がいた。
旅は45日間と固定された。帰りの日が決められる代わりに、航空券が安くなった。
その代わりに、新しいチケットを買う金など持っていなかった。持ち物は最低限に必要なものと15万円ほどの現金のみ。まさに生きて帰れるかどうかギリギリのラインだった。初めての海外旅行でもあったし、怖いはずだが、怖いというより、どうしてもやらなければならないという思いに駆られていた。
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